輝け!日本ハメ撮り大賞
先日、西新宿の某ホテルにて「輝け!第1回 日本ハメ撮り大賞」なるイベントが行われた。ま、カンパニー松尾監督がhmpというメーカーで発売する作品用の企画なのだが、それでも他社の社員監督も含む21人の監督・男優が勢ぞろいするという大掛かりなものであった。
準備を含めて1時間の間に、ホテルの一室でそれぞれハメ撮りを行い、撮りあがったビデオテープを審査して大賞を決めるというシステムだ。僕も審査員として参加(実はハメ撮り監督として出場もしているのだが)。ある程度、同じ条件下で撮られても、それぞれの個性が如実に現れ、ハメ撮りという表現の可能性を改めて考えさせられた。
さて、ハメ撮りとは何かを知らないBUZZ読者も多いと思われるので説明しておこう。ハメ撮り、すなわりハメながら(セックスしながら)撮るの意味である。男が自らカメラを持って被写体である女の子と一対一で撮影することを、エロ業界ではハメ撮りと呼んでいる。AVの場合でいえばハメ撮りでは男は、男優でありカメラマンであり監督でもあるという一人三役を担うことになり、必然的に撮る人間の個性が浮き彫りになるのだ。
写真の分野では、女の子をナンパしてホテルに連れ込み撮影するというナンパ・ハメ撮りを80年代前半に佐々木教などが得意としていたのだが、AVの手法として一般化したのは90年代に入ってからである。
80年代の終わりにも伊勢鱗太郎(じゃがたらやメトロファルスなどの、アンダーグラウンド系バンドを作品に起用することでも知られる監督)などは、作品の一部にハメ撮りを導入していたが、あくまでも実験的な手法というニュアンスがあった。
ハメ撮りの可能性にいち早く気づいて作品化したのは、ゴールドマン監督である。89年に発売された『なま』(アートビデオ)という作品は、モデルと一対一のラブホテルでのSMプレイを60分ノーカット・ノー編集によるリアルタイム撮影したものだった。
「スタジオで周りにスタッフが何人もいて、キチンとライティングして、という中でセックスしてもお芝居でしかないでしょう。8ミリビデオで密室でモデルと一対一で撮ったら生々しくて違うものが撮れるんじゃないかって思ってました」(ゴールドマン)
しかし、当時のAVメーカーは、こうした手法に対しては否定的で、結局ゴールドマンは自費制作でこの『なま』を完成させたのである。その当時、既に8ミリビデオカメラは一般化していたが大手のAVメーカーが撮影に使用することはなかった。画質うんぬんよりも、プロが家庭用の機材を使うということ自体に抵抗があったようだ。結局その後、バブルが弾けてしまい製作費を安くするために、AVメーカーもこぞって8ミリカメラでのハメ撮りを多用することになるのだが・・・。
「日本ハメ撮り大賞」を主催したカンパニー松尾も90年代に入って叙情的な独自のスタイルによるハメ撮りを完成させ、自分が見たものをそのまま撮るという一人称撮影は、私小説的な表現になりうるということを証明した。さらにそれを押し進めたのが平野勝之監督である。『わくわく不倫講座』(V&Rプランニング)などの一連の作品は実際につきあっている女性との恋愛の過程を日記的に撮り続け、良質なドキュメントに仕上げている。
今回の「日本ハメ撮り大賞」は、こうしたハメ撮りの先駆者たち(平野は不参加)たちに加えて、WATARUX、ターボ向後、インジャン古河といった若手監督も参加。ホテルの一室、モデルと一対一での撮影という同じフォーマットの中での新旧対決は見ごたえのあるものになった。伊勢監督時代からハメ撮りを続けている平口広美が見せ場やアングルなどのツボを押さえまくったパーフェクトな職人的ハメ撮りを見せたかと思えば、ターボ向後は女の子にメッセージカードを持たせて、自分はサンプラーのビートに合わせてハメ撮りについての歌をがなりたてるだけという非エロ作品で問題提起する。どんな時も自分のカラーを崩さない中野D児は、相変わらずのフェティッシュな映像を展開し、ダイヤモンド映像出身の日比野正明はオヤジ色大爆発のムケてるセックスで勝負。あ、ちなみに僕は女の子とオフロに浸かって、30分間イチャついてるだけというのを撮りました。
これだけ個性あふれる映像が集まると、審査の方も大変だったが、最終的に大賞に選ばれたのは、現在若手監督の中で最も注目されているインジャン古河であった。恋愛感情と仕事としてのセックスというテーマを、ハメ撮りというフォーマットの中で見事に表現、しかもしっかり笑わせ、なおかつエロでもあるという離れ業を披露。本来ハメ撮りを得意とする監督ではないのだが、やはり才能というのは、どんなスタイルで撮っても隠せないものなんだなぁ。
今回の企画を、音楽に置き換えるならば、弾き語りでの競作というところだろうか。AVファンにとっては、ニール・ヤングとラモーンズとエアロスミスとソニック・ユースとジャズ・ブッチャーと椎名林檎などが、同一テーマの弾き語りで競い合って、センスの差でベックが優勝、みたいな感じだといえば、なんとなくニュアンスわかります?
*「BUZZ」(ロッキングオン) 2000年11月号 「SEX,BRAIN,ROCK'N ROLL」より。
このビデオは「輝け!第1回日本ナマ撮り大賞」(前・後編)のタイトルでhmpより発売されました。
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